殺人の疑いで一家そろって村から追い出された人物の子供が主人公
毒入りコケ汁事件が発生し、毒物混入、殺人の容疑をかけられたものの証拠不十分で逮捕とはならなかった人物の子供が小説「雷神」の主人公です。
人里離れた田舎の山奥の村で起きた毒入りコケ汁事件をめぐる冤罪事件の真相を解明するというのがメインテーマとなります。
容疑をかけられたまま死んでしまった父親が、昔本当に毒入りコケ汁事件を起こしたのか、
その真相は物語の最後まで読み進めてようやくたどり着くことができます。
何気ない誰かのやさしさが、人をかばう気持ちが、
そして自分の家族を傷つけた者たちを赦さない思いが、
それぞれ複雑に絡み合って毒入りコケ汁事件が起きてしまいます。
あの時こうすれば未来は違ったかもしれない、その積み重ねに思いをはせる物語
道尾秀介著作の「雷神」は1つ1つの小さなやさしさや何気ない行動の積み重ねで起きる様々なすれ違いが描かれています。
その時はやさしさのつもりでも、何も考えていなくても、
その行動が後から大きな事件につながってしまうという展開が印象的でした。
あの時こうしていればこうはならなかったのに、と主人公ともども考えたくなるような出来事が度重なります。
人の考えはその行動から読み取れることもあれば、情報が足りずに読み誤ることもあります。
小説、雷神の登場人物たちの間に起こるすれ違いは人の考えを決め付けたことにもあるように思いました。
真犯人が人殺しにならずに済んだ未来があれば
小説「雷神」の中で起きる一連の殺人事件、毒入りコケ汁事件の真犯人は意外な人物でした。
真犯人が人を殺してしまう結果を引き起こす一連の出来事を思い返せば、
知らなくてもいいこと、知らなければよかったことを知ったことにあります。
もしも真犯人がそれを知らなければ、事件は何も起きませんでした。
知らなければ何事も起きなかったとはどういうことか、それは小説「雷神」を読んでみればわかります。
まとめ
何を知り、何を知ってはいけなかったのか。そしてあの時どうしていればよかったのか。
人はいつもその場面で正しい選択ができるとは限りません。
何気ないやさしさが、自分の母親を死なせてしまう結果につながることだってあります。
人を思いやる気持ちが殺人事件につながっていくことだってあります。
小説「雷神」では人の思いと行動の積み重ね、そして誤解が招いた一連の事件が雷が鳴り響く村を舞台に展開されます。
人の気持ちがわからない田舎者の代表のような4人組が毒入りコケ汁事件で殺されても同情はできませんが、
彼らを殺す結果になってしまった真犯人には同情しかありませんでした。