マンモスの抜け殻とは、介護の闇を描いたミステリー小説
相場英雄著作の「マンモスの抜け殻」を読みました。
この小説では冒頭で一人の地元のお金持ちが殺されます。誰が殺したのかという謎を追って、物語は進んでいきます。
最初に疑われた人物が犯人ではないのは最近のミステリーの王道とはいえ、今回も意外な人物が犯人でした。
重要なことはそこではなく、私はこの作品のメインテーマとして取り上げられている介護現場の闇について興味が持てました。
また、登場人物たちが殺された被害者が過去に犯した犯罪のせいで抱える過去のトラウマも事件解決と同時に解決していくのですが、そのおぞましいトラウマと、それに対する適切な周囲の対応も素晴らしいなと思いました。
マンモスの抜け殻に描かれる介護現場の闇とは
介護報酬の不正請求問題や元やくざが介護現場で働いているという実態が描かれています。
マンモスの抜け殻では、どうして介護施設で介護報酬の不正請求が行われるのか、介護士たちがどれほど長時間労働を薄給で強いられているのか、どのような人材が求められるのかといったリアルな問題を描く場面があります。
もちろん、多くの介護施設は厳しい経営状況の中でも不正に手を染めないように努力していますし、万が一不正請求があれば行政の指導が入ります。それでもいまだに不正請求問題は絶えないというのが現実のようです。
実際に検索をしてみると介護報酬の不正請求についての公式ホームページがいくつかありますので気になる方はチェックしてみてください。
介護現場についてちょっと詳しくなれる小説だね
介護施設ではどんな人が何を考えて日々働き、利用者はどういった人がいるのか、誰もが終生無縁とは言い切れない介護施設についての諸問題をミステリー小説を通して知るきっかけになる小説です。
注意点は登場人物たちが抱えるトラウマの内容
ただ一つ注意点を挙げるとすれば、詳しくは書きませんが登場人物たちがあの遠い夏の日に抱えてしまった恐ろしいトラウマの内容です。
それを知った第三者の対応が素晴らしく常識的で良心的だというのが管理人の感想です。
最後に明らかになった犯人の過去も相当に陰鬱なものでしたが、余計な誹謗中傷などせず、淡々と、かつ親身に対応をしていた点が小説ならではという気がしました。現実ならもう少し犯人に対する誹謗中傷騒ぎやSNSによる拡散など起こりそうなものです。
どのような時代背景に生まれたとしても、この犯人のような生き方は今も昔も格好の誹謗中傷の的になるでしょう。
人物に対する理解よりも誹謗中傷が先に立つ現代でも、この小説「マンモスの抜け殻」に登場する刑事のような姿勢で犯人に対峙するような人物が実在するならいいのになと思いました。
まとめ
介護現場の厳しい実態と希望を小説を通して知りたい人にお勧めです。