百田尚樹著作の「野良犬の値段」はネット上に突如現れた誘拐サイトを舞台に繰り広げられる、劇場型犯罪がメインテーマの小説です。
誘拐された6人は実はホームレス。
野良犬とは彼らホームレスを示しており、
野良犬の値段、価値について社会に波紋を投げかけるストーリー展開になっています。
ホームレスに石を投げる若者たちの問題
小説、野良犬の値段で描かれる光景の一つに、ホームレスに石を投げる若者たちがいます。
これは社会問題として現実のニュースでも取り上げられたことがあります。
なぜ、若者たちは遊び感覚で家も仕事も希望も失ったホームレスに石を投げるようなことをするのでしょうか?
弱者を集団で虐げることを遊び半分でするような若者は、第三者目線でも不気味です。
人の心がわからないロボット集団のように見えます。

一流企業に勤めていても、明日はホームレスという都会
ホームレスに石を投げつけるような若者たちは、ホームレスになるなんて自堕落だからだ、だから懲らしめてやろうなどという感覚なのでしょう。
ですが、この小説「野良犬の値段」の中で描かれるホームレスたち一人一人の生い立ちは読んでいて悲しくなるほど理不尽な運命に翻弄されています。
誰もなりたくて、怠けて、ホームレスになったわけではありません。
ホームレスの中にはもちろん、凶悪犯や自堕落なだけの人、
またはおぞましい事件を起こして社会で生きていけなくなったような人も含まれますが、
真面目に頑張って働いていても、理不尽な運命に妨害され、ホームレスへと転落してしまう人たちも多いのです。
小説、野良犬の値段ではホームレスになってしまう事情は人それぞれであり、
元はまじめで優秀な社会人だった人もいるというリアルを私たちに教えてくれています。
誰もが厳しい現代社会の中、明日はホームレスというのは他人事ではないという意識を持つことが大切だと思いました。

ホームレスなんてどうなってもいい?
ホームレスであれば誘拐され、殺されそうになったとしても助ける必要はないのでしょうか?
河川敷で寝ていただけなのに、殺されたホームレスに同情の余地はないのでしょうか?
そんなことはないはずです。
小説、野良犬の値段の話の中ではホームレスが大勢出てきます。
善い人もいればとんでもなく恐ろしい、悪いことを悪いとも思わない凶悪犯もいます。
ですが、みんなもともとは同じスタート地点から人生をスタートした人々です。
ホームレスとホームレスではない人々との違いで差別的思考や行動に走るのは人道的ではありません。
この小説に登場するようなホームレスに石を投げたり、殺したりしてしまうような若者は現実にも存在するということが恐ろしいです。
まとめ
野良犬の値段という小説は、ホームレスという存在の価値を社会に問いかけ、一度野良犬になったら這い上がれない現実を私たちに突きつけています。
不寛容な日本社会で、一度ホームレスになった経歴を持つものを採用してくれるまともな企業はいくつあるでしょうか?
企業は利益を追求するのが信条とはいえ、優秀で曇りの一点もない模範的な人間を求めすぎではないでしょうか?
採用率が高く、劣った者でも雇ってもらえるような企業は仕事内容や待遇、将来性、人間関係が良い企業と比べると劣悪です。
そして様々な理由で長続きしなかったり、トラブルに巻き込まれるなどして仕事を追われ、
お金が尽きると人はホームレスへと転落してしまいます。

ホームレスにだけはなりたくないと、多くの人がもがき苦しみながらも働き、お金を稼ごうと必死になっています。
働いても働いてもすぐ後ろにはホームレスへの転落が口を開けて待ち構えている、そんな暮らしに追いかけられるような日々を送っている人は大勢います。
悠々と高い給料ともらい、スキルを積み重ねながらコツコツと仕事をし、安定した地位を確立し、そのまま定年まで勤めあげることは理想ではありますが、
誰でも簡単に実現できるモデルロールではありません。
世の中には、理不尽な運命に翻弄されてしまうという青天の霹靂のような不運が確かに存在するのですから、
努力をしていてもあらがえない理不尽な運命というものは誰にでも起こりえる話です。
野良犬の値段を読み終えると、自分は努力をするまじめな人間だからホームレスなど関係ないと無関心ではいられなくなります。